もどる

「今回は、30歳代 女性 主婦 匿名希望さんからよせられた内容です。」

第15回  「子供をまるごと愛するには」

From  匿名希望さん

小学二年の息子との関係で相談します。2年前に下の妹を妊娠中から上の息子に対して言葉の暴力が始まりました。私は絶対に手は出さないし、バカとかブタなど人格を傷つける言葉はいわないで子供を怒鳴らないでおこうと決心するのですが、きっかけがあるとがまんできずに毎日怒鳴っています。人の顔を見て話をきかないし、最近は私の顔色を伺って上目遣いになってる目がまたいやです。こちらが頼んだ用事をせず、自分のしたいことだけを「こんなに工夫してやったんだよ」と吹聴する。勉強でも時間がかかり、私が横につくとつい怒鳴ってしまうので、なるべく一人で机に向かわせているが、時間ばかりダラダラ過ぎて学力は全然あがりません。この子のいいところは先生でもお稽古ごとのコーチにも、ものおじせずハキハキものがしゃべれることだったのですが、最近ではそれさえもできなくて…きちんと相手の目を見て話せる大人になって欲しかったので武道を習わせたのですが、人の目を見るどころか背中を向けて話しする有様です。私は専業主婦で働きにもいってないのに、長男に行儀を教えたり勉強の習慣を身につけさせたりさえもできない自分を腹立たしく思い、毎回キーキー叫んでいたせいで体調不良になって、今は医者通いをしています。行儀がいいとか成績がいいとか条件付きの愛で子供を縛ってはいけない。ありのままの彼を受けいれなくてはと思いつつ、顔を見るとふとしたことで怒鳴りちらしてしまいます。どうしたら息子をまるごと愛せるような心になれるのでしょうか。このままでは、思春期になったとき今までの仕打ちのへの反発として「引きこもり」「家庭内暴力」などに走らないかと心配です。

 

カウンセリングメッセージ

by  Yuriko

 これほど不本意な心境で息子さんと暮らせば、体調不良になるのもやむを得ないと思います。あなたがまるごと愛せないのは、息子さんではなく「自分自身」だということを知ってください。

 あなたは、結婚生活を含め、自分の人生や自分自身に「こうでなければならない」とか「こうであったらどんなによかったか」という悔いる思いをたくさん抱えて生きていませんか。

 そうした不満とストレスを、息子さんに投影して怒鳴っているように思われます。さらに、それにうまく対応できない息子さんの態度に「無意識のうちに自分を見て」腹を立てているのかもしれません。それほどまでに、あなたは傷つき疲れ果てているのでしょう。

 まず自分の内面を振り返り、人からどう扱われると「自分の存在価値をあるがまま認め、幸福な気持ちで動けるか」を感覚的によみがえらせてください。あなたが抱いている自身への不満と自己否定の気持ちを、認めて許し、一度受容する必要があります。 「育児」はそのまま「育自」です。怒ったりおどすことで人は伸びるものではありません。強迫観念で行なう行為は一時的でいやいやするので、いつか必ず挫折して自信をなくしたり、屈折して人にも同じような仕打ちをする心を植え付けてしまいます。

 小2の子どもにとっては、母親にほめられることが自己存在の証しです。だから「こんなに工夫してやったんだよ」とせめてできることを見せてあなたに愛してもらおうと必死なのに、それをあなたは「吹聴」といい放って、彼のできない事柄を指摘する。この冷酷さを、自分自身の傷の深さとして認識してください。

 息子さんは、そんなあなたを映し出して見せる鏡の役を引き受けてくれていると考えましょう。もちろん、いたいけない心をそうとう深く傷つけながら、それ以上に尊い愛をもって何も知らずあなたの前にいるのです。 

 怒鳴ってばかりいるのは、自らが苦しくてSOSを発信している状態でもあります。相手に怒っているというより、自分自身に怒っているのです。だから、「傷ついた自分をまるごと愛そう」「これまでを受け入れて今の自分を慈しもう」と心から思えれば、あなたは息子さんへの態度を改めることができて事態は変わるでしょう。

 次に、息子さんの心の手当てについてですが、「怒り」のエネルギーは、人を病気にさせるほどの毒を放つのです。だから、その毒を心身に充満させる本人は当然病んできますが、年中浴びている相手も健康ではいられなくなります。

 今息子さんは、自分を否定して他人を恐れ、とてもおびえて生きています。上目遣いも、ものおじするのも、背を向けて話すのもその表われです。こんな自信喪失の状態で、実力を発揮できるはずがありません。

 今息子さんを立ち直らせることができるのは、母親の無償の愛だけです。彼の生涯のトラウマにならないように、やさしく詫びる思いで「どれほど彼が大切で、生まれてきてくれたことに感謝しているか」を何度も伝えてください。抱きしめてあげてください。

 あなたは無意識に、自分が一番して欲しくないことを息子さんにしてきました。これからは、あなたが一番して欲しいと望んでいることを彼にしてあげましょう。それによって立ち直り輝いていく息子さんの姿が、今度はあなた自身の姿と重なっていくと思います。

 今ある苦しみが、これからの親子の絆をより深いものにしてくれるようにと願っています。

ご相談入力コーナー



copyright (c) 2001 Yuriko Usami's Internet office. Mostrecent update: 2002/11/08