Vol.17

「いいかげんのすすめ」

Vol.17「いいかげんのすすめ」

 

 右を見ても左を見ても、競争競争でうんざりしていませんか?負けている自分を手放しで認められなくて、他人を認めることもつらくなっていませんか?

 競争に負けて疲れてくると、人は自信をなくして自暴自棄になったり、羨ましさを越えてひがみっぽくなったりします。でも、それはあなたがいけないんじゃなくて、競争社会では避けがたいなるべくしてなる心理です。

 そこで、お勧めしたいのがいいかげんのすすめ。健全な精神は、『いいかげん』な心身に宿る?のです。

 勤勉をよしとする日本人気質から言えば、この"いい加減"ほど嫌われる言葉はないかもしれません。でも、私の提案する『いいかげん』は"良い加減"なのです。アクセントも内容も違うでしょう?いわば、程よい加減のことです。

 日本人って、やるからには完璧にしなくちゃとどこかで思っていますよね。「〜でなくちゃいけない」 といった言葉が日常会話や自分へ向けてよく出てきますが、その結果、身も心もボロボロになってしまって…癒されたい人がなんと多いことでしょう。

 楽器の弦は、緩めすぎてもいい音色が出ないし、張り過ぎたら切れてしまいますね。弦は程よい加減に張ってこそ、初めて美しい音色を出すことができます。これが、この言葉の起源です。

 人間も同様に、程よい張り加減の中でこそ力を存分に発揮できるのです。私たちは、ダレ過ぎても活力が発揮できなくてやりがいを感じられないし、張り切り過ぎても空回りして効果が出ずに疲れてしまうようにできています。「己を知る」とは、自分の弦の張り加減を知ることだと私は思います。

 自分以外の優秀な誰かになろうとしても、無理やり弦を張れば当然のように疲れます。己を知らないと、わざわざ人生に疲れる原因を自らが作り出してしまうのですね。自分のベストの張り加減を見い出すこと。それでこそ、自分にしか出せない音色に出合えるというものです。自分の音色を奏で始めると、人生が楽しくなってきますよ。

 そのためには「自分の精いっぱい」を知り、「これでいいんだ」と思い切りよく発想の転換をすることです。そこは競争のない世界ですが、逆に手抜きもありません。ここが大切なポイントで、俗にいう"嫌われるいい加減"との違いです。

 "等身大の自分=精いっぱい良い加減を生きる自分"です。この『いいかげん』を1日も早く身に付けてください。

 日常生活で、知らず知らずのうちに張り詰めていた神経の糸を、いいかげんに緩めてみると、そうした方が返って物事がうまく運ぶと気が付くでしょう。それはあなたが、カリカリやイライラを止めて自分の出している音色を聴きながら調整するからです。そして、人に対してもう競争の波動をばらまかないから―。

 そこに新たに生まれるものが「共創」の意識です。それぞれが等身大の力の中でベストの音色を奏でるとき、人は心からお互いを認め合うことができます。そして、一人一人が持っている能力を活かし合えたら素晴らしいと思うのです。

 21世紀は、「競争」から「共創」の時代になることでしょう。今世の中は、このままではうまく回らない、幸福には生きられないという現象を味わっていて、人の心も社会のシステムも、何もかもが限界を迎えて変わらざるを得ない状態です。

 これから、世の中のたくさんのことが改められるでしょう。でも、それを創り出すのは一人一人の意識の改革後なのです。

 自分が人生に疲れているのは、世の中のせいではなくて自分のせいです。まず、自分の人生の幸不幸に責任を持ってかかわろうと決意してください。自分で自らの弦を張り直してください。

 あなたの中の競争意識を共創意識に変えることが、社会を変える第1歩です。それが始まらなければ何も始まらないのです。  

 

 



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