〜「今日は死ぬのにいい日だ」〜

"It's a good day to die"

Vol.2

「女だてらに!」「女なんだから!」「女のくせに」女性なら、1度は言われた経験がある言葉ではないでしょうか。

 男なら許されても、女が同じことをしようとすると、周囲から白い目で見られてしまうことって多いですよね。

 私も10代のころ、どうしても音楽バンドでドラムを叩いてみたかったし、バイクにも乗りたかったのです。ところが、「とんでもありません!」「女の子が股を開く楽器なんて!」「バイクは危ない」と、親から猛反対されてしまいました。

 そして、反対をされてしまうと、「それもそうよね…」「しょうがないな」と、いつもあきらめてしまったのです。つまり、自分があきらめるために、女性だから…という価値観を言い訳として受け入れていたのです。

 当時、親友の女の子もプロレスの選手になりたいと、親に相談したところ、同じように反対されました。そして「女だから、しょうがない。男に生まれたかったね」と、お互い慰め合っていました。

 これから数年後、私は地元の放送局へ入社。そこでも、女子社員だけが、なぜお茶くみと新聞綴じが日課になっているのか、と抵抗感を抱いていました。

 さらに、25歳を過ぎると「結婚して子供を産むのが当たり前」という周囲の目と圧力。しまいには、強迫観念のようなものを感じ、「そうせざるをえない」「しなくちゃ生きづらくなる」と、自分を縛っていました。

 心の底では、抵抗しながらも“つつがなく生きていかなくては”という観念との引き換えに、本当に自分がやりたいと思っていることをあきらめていたのです。でもそれは、このままの人生で終わりたくないという渇望感となって、常に私を焦らせ暗くしていました。

 しかし39歳で離婚。翌年アメリカへ旅した際、カリフォルニアから北に飛行機で1時間ほどのシャスタ山にいるインディアンに出会って、私の人生は一変したのです。

 彼らはIts a good day to dieという言葉を私に教えてくれました。直訳すれば、“今日は死ぬのにいい日”ですが、本来の意味は“古い価値観に縛られている自分が死ぬのにいい日”、つまり“余分な観念を捨て去るのは今だよ”ということなのです。

 彼らは、日常の悩み事があるたびに、お互いこの言葉をかけ合い、先祖から受け継いできた、この精神を大切にしているということでした。それが、彼らの勇気と成長を支えていたのです。

 なんと素敵な習わしでしょう。この言葉に、私はショックを受け、そして感動しました。私は、単なる臆病者だったのです。人目ばかりを気にして勇気をなくしていた私は、人生のハードルは越えるためにあると思えるようになりました。

 その日を境に、あきらめづくしだった私の人生は、いわば毎日が新しい自分が生まれる“誕生日”になったのです。それからは、人生にふりかかるどんな些細なことからでも成長することができ、悔いなく生きられる、という実感を得られるようになりました。

 もし、あなたが「〜すべき」という、価値観で悩んでいたら、今では私の座右の銘となったこの言葉を贈ります。

 “Its a good day to die for you

 



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