Vol.17

 「隙間不安シンドローム」

 

 ―私は1カ月先までびっしりスケジュールが埋まっていると安心します。それなのに、せっかく埋めたスケジュールを突然友達からキャンセルされるとムカツク…そんなときは、誰か代わりの人を必死になって探します。でも、いつも同じ人ばかりじゃつまらない―

 スケジュール帳に予定のない空白部分があると、どうも不安で落ち着かないという女性が急増しているようですが、あなたにはこんな傾向ありませんか?

 そういう人たちの多くは、週末やアフターファイブは様々なカルチャースクールに通ったり、毎日のように流行のスポットへ出向き、携帯電話をかけて仲間を募りながら忙しく遊び回っています。が…こうした人たちを称して『隙間不安シンドローム』と呼びます。

"隙間"とはスケジュール帳の隙間のことで、スケジュールが埋まっているか埋まっていないかという点だけにとらわれる症状のことです。つまり、スケジュールの内容よりも、とにかく真っ黒にスケジュール帳が埋まっていることで安心感を得ていることが問題なのです。

 なぜそうなるかといえば、とにかく「他人からいつも注目されて認められる自分であれば安心」で、裏を返せば「売れてないと不安」だからです。かといって、いつも同じ相手の承認では物足りないし、選んでいて取り残されたくもない…。

 このような気持ちになる背景には、一人きりになって自分と向き合うことを避けたい…淋しさと直面したくない…自分の本音を探るのは怖い…といった深層心理があります。

 その結果として、必然的にアクティブになります。でも、そのままのペースで突っ走っていったら、人はいつか息切れしてしまうということです。

 実は、私も以前はまさしく『隙間不安シンドローム』でした。隙間=空白=無駄=後退という強迫観念があったからです。そういう価値観で育てられたということもあったでしょうし、そのときは活動的で多忙なのは素晴らしいと信じていました。

 でも、忙しく飛び回って心身共に疲れ果て、倒れてから気が付いたのです。得たものより失ったものの方が多かったことに…。それまでは、休んだとしても次の日に備えてとか、何かしたとしても取得すると有利だからといった考えで、決して心から憩う時間はなかったことを思い知りました。

 やがて180度違う生活をしてみて、空白の中にこそ、人をホッとさせて解放する力が秘められていること。何も得しない行為の中に、本当のゆとりが存在することを実感したのです。

 人間の生活というのは、動と静、つまり緊張と弛緩のバランスによって保たれています。スケジュール帳に置きかえれば、黒と白のバランスが取れているということです。この白に見える空白の部分が、実はとても大切な役割を担っているのですね。

 休息して体を休めることと同様に、心を休めるスケジュール帳の空白が私たちの人生には必要です。誰にも知られず、昼寝、読書、絵画など何でもいいから、自分がそのとき最もやってみたいことを密かに楽しむ心のゆとりが不可欠なのです。

 また、黒は白い隙間があるからこそ、逆にその価値も際立ち、最大の力を発揮するということも覚えておいてください。

 自分で自分の時間を使い分ける意志を持つようになれば、自然とスケジュール帳の空白に怯えることもなくなります。それどころか、空白が愛しくて、つい"自由"と書き込みたくなります。

 そう、何にもないのではなくて、"自由な時間"を作り出してください。そこに最大の価値を置いてみましょう。さあ、その時間に何をしますか? まずは、あなたが1番無駄だと思うやってみたかったことから始めましょう! 次に2番目に生産的でないことは?

 これで『隙間不安シンドローム』とはお別れです。あなたの価値は、真っ黒なスケジュール帳が握っているわけでもなければ他人が牛耳るものでもない。あなた自身がどのくらい自分を愛しているかで決まるのです。

 



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