Vol.16

 「善玉もいます!」

 

 最近、世界的に活躍する日本の若いスポーツ選手が増えています。イタリアのサッカー界で活躍する中田英寿さんは、インタビューに応えてこう言いました。

 「いつも負けることなんて考えていません。いくら相手が強豪でも、勝てるかどうかなんて心配するよりどう攻めるかしか頭にないですよ」

 実は、この言葉の中には、一般の人々にとっても非常に参考になる考え方が秘められています。

 普通ストレスというと、マイナスのイメージがありますよね。ところが、心理学的には日常と状況が変わったときに受ける緊張のことを総じてストレスといいます。その種類には、まるでコレステロールの善玉と悪玉のように、『善玉ストレス』と『悪玉ストレス』があるのです。

 俗にいうストレスとは『悪玉ストレス』のこと。自分に不都合を感じたときに生じるもので、例えば"リストラ""減給""離別"などに遭遇したり、困ることを予測するだけで発生します。中田選手の立場で言えば「相手は強豪だからやられそう…」「負けたらまた叩かれる…」と思えばこれに当てはまります。

 逆に『善玉ストレス』は、"栄転""昇格""結婚"といった日常からの変化が嬉しいことや張り切ることにつながる場合に生じるパワーです。中田選手は「相手にとって不足なし」「今日もチャレンジあるのみ」という自分に勇気が湧いてくるようなこちらの発想ができているのです。

 転職や離婚もそうですね。人によって同じ事柄をプラスと感じる人もいればマイナスに思う人もいます。また、利害や立場が変わった途端にプラスとマイナス、善玉と悪玉が入れ替わってしまうことだってあるでしょう。

 ようは、その人の意識―「逃れたい」or「やるぞ!」次第で、ストレスのパワーはどちらにも転んでしまうのです。当然のように、善玉はその人を活性化し、悪玉は心身を蝕みます。

 さらに、新しい環境に飛び出して、あるいは新たな条件下でストレスを抱くのは、自分を取り巻く環境が不安因子になるからではありません。それに対して、自分の精神が恐れを作り出し防御に入る結果なのです。 となると、ストレスを闇雲に嫌うのは意味のないことで、このパワーをうまく使って人生をおもしろくした方がいいということになりませんか? よく、私たちが生きていく上ではストレスも必要だといわれるのは、本来ストレスはやる気をかきたてる要素でもあるからです。

 強いスポーツ選手は、同じ条件下で"プレッシャー"を『善玉ストレス』に変えて、精神的に楽しみながら積極的に競技を行います。私たちも同じように、日常生活の悪玉ストレスをやる気パワーに変えることができるのです。

 まずは、しこたま『悪玉ストレス』を溜め込んでビビッている自分を、丸ごと受け入れて黙って承認してあげましょう。それから一つ一つ悪玉を取り出しては眺め、心の中に浮かんでくる"不安"を、できるだけ速やかに『善玉ストレス』に切り替えていきます。

 それは、自らの"勇気"に置き変えることです。不安は停滞のもとですが、勇気は行動開始の引きがねになります。「いやだ。どうしよう…」と思っている時間をできるだけ短縮して、「なるようにしかならない。さっさとできることから取りかかろう」に変えてください。それが、自分への自信を育てることにもつながっていきます。

 その過程は、やっている最中から元気が出てくるワクワクする作業のはず…。そのうち、同じ明日を違う明日にするのも、同じ自分を今日から好きになるのも、自分次第なんだと感じられたらしめたものです。

 そうなったら、徹底的に善玉作りを目指しましょう!パワフル人生が手に入りますよ。 

 



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