Vol.13

 「心の進化の最終段階」

 

 仕事も充実して、会社の同僚や友人、恋人にも恵まれている…特に不満はないのに、人生に何か物足りなさを感じる…こんなことをいうのは贅沢かな?と思ってみても、人生にはもっと何かあるような気がしてならない―。

 みなさんは、こんな感覚って分かるような気がしませんか?

 人生にふと物足りなさを感じるものの、それがなぜなのか、どこからきているのか、自分で見つけられない状態ってありますよね。

 実は、この心のもがきは、あなたがもうワンステップ進化しようとしているすばらしい兆候なんです。私たちの欲求を精神的発達に則して説明しましょう。

 マズローという心理学者は、人間の欲求を5段階に分けて、通常は第1段階の欲求がある程度満たされると第2段階の欲求を抱くという形で、人の精神は進化していくといっています。これがその順番です。

(第1段階)生理的欲求=生存のための本能的な欲求
      (食欲・性欲・睡眠欲)

(第2段階)安全と安定の欲求=身を守るための住居や生活の糧を
      得る欲求(金欲)

(第3段階)所属と愛情の欲求=家族・友人・仲間といった信頼関係を
      確保する欲求

(第4段階)自尊と承認の欲求=自他共に認め尊敬されたいという欲求
      (地位欲・名誉欲)

(第5段階)自己実現の欲求=与えられた能力を発揮して、人を幸福に
      したいという欲求

 5段階目は、奉仕の欲求ともいって、精神の発達としては最終段階の欲求です。自分にしかできない世界を広げ、あるがままの才能や技能を活かして人々の役に立ちたいと願い、他人の喜びが自分の喜びになる状態です。

 正常に精神が発達していけば、私たちは自然に第5段階の欲求を持つのですが、多くの人々は、第4段階までは至るものの、終わりなき欲望に取り付かれて第1〜4段階をさまよい、第5段階へたどり着けずにいるように感じます。これは、頭で損得を計り、将来の不安を考えてはエゴイズムに走るからですね。

 でも、限られた瞬間なら、思わずした無償の行為が人に喜ばれた快感や、そこに自分の存在価値を見い出した感動の記憶が、誰の胸にもきっとあると思います。また、私たちには、もし目の前で誰かが溺れかけていたら、たとえ見ず知らずの他人でも、自分の都合を度外視してとにかく助けようと必死になる本能的な愛がありますよね。

 このように、第5段階の欲求を満たすだけの愛をみんなが持ち備えながら、よほどのことがない限り提供しないとしたら、世の中も自分もギクシャクしてくるのは当然だと思いませんか?

 人生に物足りなさを感じたら、惜しみなく愛を広げてください。あなたが新しい何かを発見するチャンスです。あなたは自分の力を持て余しているのかもしれません。とりあえず、規模に関係なく、自分が気持ちよく見返りを求めずにできることを何か決めましょう。

 特技があれば喜びを持って差し出せばいいし、特別な技能がなくても、例えば、身近かな人へのおもてなしというところからスタートしてもいいですね。豪華な食事を用意しなくても、心の温まる演出や音楽ひとつで、食卓を囲む人々の心を暖かくすることはできるはずです。その人はあなたの愛をいただくわけですから―。

 あなたが輝いて一生懸命したことは、必ず人の心に染みていきます。人に喜びを与えることで幸福感を得られれば、その幸福感は生きている限り続くあなたの生きがいになります。もう、比べることも裏切られることもなく、物足りないことも終わりになることもない世界です。

 21世紀は、人類が最終進化を遂げるときといわれています。自己実現の欲求は、すなわち至福欲求です。これこそ、実に求めがいのあるものだとは思いませんか?

 



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