Vol.12

 ”対人関係継続困難症だったら…”


 

 この春、社会人になった人たちが半年目を迎えますね。人と知り合うのは嫌いなわけではないのに、会社の同僚たちと親しくなっていくと、「恋人は?」「実家は何の仕事?」といった具合いに、根掘り葉掘り詮索されるのがたまらなくイヤで、会社にいるのが憂鬱になってしまうという人が出てくる頃です。

 自分を相手にさらけ出すようなことはうっとうしい…かといって、このままでは本当に心を開いて何でも打ち明けられる友人もできない…と不安になって、毎日顔を合わせる同僚たちと、どう接していけばいいのかわからなくなってしまうという現象です。

 実は、こうした悩みを抱える人が、特に新入社員を中心に最近急増しているようです。これは、俗に『対人関係継続困難症』といわれるもので、人と知り合うことは嫌いではないのに、継続して深く付き合える人間関係を作り出せないで苦悩してしまうことです。

 「深い付き合いはイヤ」という裏には、「本当は楽に深い付き合いをしたい」という潜在欲求が隠されています。それなのに、傷つきたくないから人との接触を避け、深く付き合うことを面倒に感じる…それでいて、胸の奥はいつも寂しいままなのです。

 同様のことが、最近の若者の人間関係に対する3つのキーワードからもうかがえます。

 「しんどいのはイヤ」「寂しいのはイヤ」「傷つくのはイヤ」

 これらの言葉からは、"努力も辛い思いもなしに、自分を満たし孤独から解放してくれる人が欲しい"という深層心理が読み取れますね。

 一般に、自分をそのまま出すことに抵抗があるのは、"相手の期待に応えられない自分を露呈するのが怖い"とか"薄っぺらな自分をバカにされるのがイヤだ"という思いがあるためですが、そういう人に限って、内心は自分に自信がなくておどおどしていることが多いようです。

 あなたが、本当に自分が心を通じ合える友人が欲しいと思ったら、ただ避けるとか言葉を濁してばかりいては解決になりませんよね。どうぞ、そのままのあなたを語る勇気を持ってください。

 まず、仲良く装うたくさんの仲間より、たった一人の本当の理解者が欲しいと思いませんか?自分の正直な気持ちを伝えるとき、多くの仲間の前では、かなり抵抗のあることでも、ある一人の前なら語れるということもあるでしょう?

 でもそれは、自分が相手に合わせたり言いなりになることとは違います。あなたはあなたのままでいいのです。自分を正直に表さないで、真の理解や解放は得られませんから。

 例えば、根掘り葉掘り聞かれることに苦痛を感じるなら、正直な気持ちを話せばいいのですが、ここで一つの智恵が必要です。根掘り葉掘り聞く相手を悪者にするのではなく、自分の性分や発想だけを語るようにしましょう。

 よく人間関係をこじらせる原因がここにありますので配慮してください。簡単にいえば、「あの人がOOだから〜がイヤ」ではなく「自分はOOだから〜がいい」という形で伝えます。

 これは、好かれるための努力とは違います。好かれるかどうかは結果です。極端な話をすれば、それこそ誤解されようが蔭で噂話をされようが、あなたの価値は少しも変わらないということも胆に命じておいてくださいね。

 ようするに、あなたが『何か(孤立)を恐れて行動を決めている』ことから、『何か(理解)を得るために行動を起こす』ように変わればOKなのです。この場合は、好かれるという結果のために行動を考えるのではなく、結果を気にしないで行動できるようになることが目標です。

 今生きているあなたの存在価値は、あなたがバカにしてもされても、友人ができてもできなくても何も変わらないものなのですよ。ただ、あなたがどうしたいかが常にあるだけです。

 あなたは、苦悩する自分に何をしてあげたいと思いますか?

 



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