Vol.10

 〜口下手だと思っている人へ〜

 

「思っていることの半分も伝えられなかった…」とか「私って話し下手だなあ…」と感じる歯がゆさを、たくさんの人が経験しているのではないかと思います。中には、口下手ゆえに、人生いろいろなところで損してると悩んでいる人もいるかもしれません。

 それでは、あなたは口下手な人が嫌いですか?私は好きです。

 日頃私たちは、どんな風にして他人の情報や印象を得ているのかを、ここで考えてみましょう。米国の心理学者メラビアンが説いた「メラビアンの法則」によれば―

 一人の人間との会話から得られる情報量を仮に100とします。その人が得る100%の情報量の内訳は、7%が言葉(内容)、38%が声のトーン(高低強弱)、55%が雰囲気(波動・気)からというものです。

 つまり、人が相手のことを見極める場合、言葉からの情報はほとんど判断材料にしていないということです。むしろ、相手のかもし出す雰囲気や、しゃべる声の調子から90%以上を読み取っているのです。これって、普段の生活でも何気なくやっていませんか?

 例えば、ブティックで洋服を手にしたとき、「それ、お似合いですよ!」と店員に声を掛けられたとします。声の調子や雰囲気で、瞬時にかつ直感的に「あっ嘘っぽい、この人イヤ」あるいは「信用できそうな人だ」と白黒つけていますよね。前者の場合は、それからいくら店員が言葉巧みに商品を薦めても、もう買う気にはならないものです。

 その意味からいえば、逆に饒舌な人は、往々にして言葉に依存しがちな傾向があるので、うまく話せたと思う場所でも好感を持たれなかったり、言葉にできない相手の気持ちを推し量れなかったりという経験をするかもしれません。

 もっとも人間は欲望がからむと、直感ではNOなのに相手の言葉にすがったり、逆にうまく言いくるめようとその場限りの嘘をついたりしますから、言った言わないの闘争やだまし合いが絶えないのですけれど…。そう言われてみれば、思い当たりませんか?

 でも、冷静な目を失わなければ、私たちは直感的に、相手の波動を感じ取れるようになっているのです。だとしたら、信頼関係を築くには、言葉以外で相手に誠意が伝わることが何より重要ですね。自分から相手に好意を持って接する、人との出会いを心から楽しんで過ごすといったことです。

 自分に"口下手"というレッテルを貼っているあなた!"口下手"は欠点ではなく、単なるあなたの個性・自己表現の一部です。それを、他の人と比べても何の意味もありません。あなたは、口で表現するより、他の手段で自分の気持ちを伝える方が得意というだけのことです。

 だから、口下手をカバーしようとするのは逆効果。それを正直に表してしまうことで、返って自分らしい言葉が素直に出てくることがよくあります。「言葉で表現するのは難しいんですが…」「口で伝えるのは苦手ですけれど…」といってしまってから、あなたが最も自分の感性に合う言葉を少し探せばいいのです。

 現に、「上手くしゃべらなくては…」というプレッシャーでいっぱいのときの表情を思い浮かべてみてください。それよりも、あなたの顔中に届けたい気持ちがあふれるように意識してみましょう。ジェスチャーも加えられたら、もっと気持ちが乗るかもしれませんね。

 また、相手の話しを誠心誠意聞くだけで、一生懸命さやハートが伝わることだってあるのです。『目は口ほどに物を言う』のは本当ですよ。

 その方が、はるかに相手に"あなた"を伝えることができます。そして、自分を自分らしく表現できれば、口下手のストレスからあなた自身が解放されることでしょう。

 実は、それを熟知していることが、その人の言葉の威力を変えてしまいます。7%の言葉が、声にも雰囲気にも合体すれば、たった一言でも、今度は100%の迫力で相手の胸に響くのです。

 



copyright (c) 1999 Yuriko Usami's Internet office. Mostrecent update: 08/06/99