はじめに | 第一章 舟を岸につなぎなさい | 第二章 潜在意識が容認しているもの |
       第三章 岸につなぐ綱 | 第四章 岸につなぐには


第二章       潜在意識が容認しているもの

 

 人類が滅亡の滝壷に近づいているのを、あなたもご覧になっているでしょう。戦争が無くても、原

爆が無くても、もう終幕に近いと。

 愛情も信頼も急速にうすれ、嘘も偽りも平気になり、疑い合い、そむき合い、おとし入れ合って、

他の不幸を待ちもうける。たちまち死にたくなり、たちまち殺したくなり、訳なしに傷つき、傷つけ

合う内部からの崩壊なのです。

 薬を飲み、養生訓を尊重し、医術の進歩に驚嘆し、一日中健康法にかかずらっていても、内部に死

にたい心が起これば、ひとたまりもない命。死にたくなくても、殺したい奴にぶつかれば、あっけな

く最期です。その上、天災と災害は善人も悪人も見分けることなく襲う。これはあなた方個人だけの

話ではありません。

 国々をごらんなさい。

 互いに他国の滅亡を乞い願うどころか、同報でも、せめぎあって、殺人と破壊の道具を造っても造

っても、足りないと思いつつ、ついに敵も味方も一緒くたに滅ぼすものを造ってしまいました。

 善いことといえば決して一致団結できないどの国も、こと殺人と破壊の戦争ともあれば、見事に国

家をあげて一致団結する。総じて、自己を破壊に導くものなら、何によらず熱中するが、少しでも人

類の立ち直りを志す者があったら、全力を尽くして咬み(かみ)つく。

 国家といわず、個人といわず、実質的には人類すべてが破壊と殺人の怪物になっているかのようで

す。つまり人類は、人類の一番の大敵と化してしまっているかのようなのです。

 このことをしっかりと認識なさい。なぜ自分で自分の大敵になっているのかを。

 いや、あなたの潜在意識は、もうとっくに自分が善人ではないということを知っており、文明も文

化も真の生命の維持法という立場から見ればそう大切なものとはいえないということも知っているの

です。文明文化に酔っぱらって、罪もない万物をあまりにも傷つけ、汚し、迷惑をかけすぎたことも

知っているのです。それで今日では自業自得の滅亡を、喜んで容認しているのに違いありません。そ

こで、自分で自分を処罰しようと決心して、かたうらみの無いように、残らず平等の全滅を目指して、

その用意万端、手落ちなく終ったというところでしょう。ことのついでに、人類を住まわせたバカな

家主の地球をも道連れに、百ぺんでも爆発させる段取りも忘れはしなかったと。

 さあ、用意ドーンです。

 爆発させなさい。

 幾十億、総自殺なさい。

 そのための莫大な金と努力と、そのようなものを造った者、造らせた者への感謝と賞賛と激励が無

駄にならないように、思いっきり、ズズーンとやりなさい。

 あなた方は、そのようなものを造るにことには、露ほども疑惑を持たず、そのようなものを造りな

がら一瞬もためらわず、何が何でもびくともせず国民を酷使し、絞り上げて、殺りくと破壊のさまざ

まな準備をやってのけられると見込んだ者を、国家の代表に、あるいは、あらゆる部門の選手にする

のです。

 しかし彼らには罪はありません。あなた方の潜在意識の総決算として選びだされたのが彼らであり、

さしずめあなた方が彼らを生んだ母胎ですから。

 今、誰かがあなた方に、人類の立ち直りと、地球をもう一度清新ならせるために、少量の金と少数

の人間を動員しなさい、といったら、あなた方はその言葉に対してどんな反応を示すでしょう?

 「とんでもない、我々の努力と金は、破壊と総自殺のためにならば捧げますが、人類の立ち直りだ

の、地球清新などという手合いとは無関係です。ああ、それどころじゃない。こんな地球などに全然

魅力ありませんね。地球から逃げ出すための用意で、今夢中なのですよ」

 なるほど、私も目を持っている以上、そうと察していたんですが、しかしこの地球にはまだ希望を

もっている人もあると思ったんです。少なくとも私と私の知人は、この地球から亡命しようなどとは

思っていません。どんなものでしょう?あなた方、たとえ他の天体に移住できるとしても、人類全員

が移住できるのではないでしょう?

 少数の者が行けるかもしれない、ということだけのために、大多数を犠牲にすることはないでしょ

う。

 いやいや、お聞きしますがねえ、あなた方、本当に地球から亡命したいんですか?

 本当はあまり亡命したくないんでしょう?

 だったら、天外に向けている目を一分位は残してもいいから、九分は地上に戻しなさい。上の空、

ということは、とかく不吉をはらみがちです。先ずは、足元用心と行きましょう。

 さて、ご覧のとおりです。大切な自分と、家主さんを打ち壊しておいて、今さら

 何の発見?

 何の発明?

 何の成功?

 何の進歩?

 なおまだこのまま進んだら、発明も発見も空しく残して、人生劇場はやがて一巻の終わりです。

 たった今全人類が当面しているこの大悲劇の前には、もう単なる平和論など役に立ちません。従来

の世界の道義を守ることや功績をたたえることも(原文は「世界道義顕揚も」)、国際親善も無力に

等しく、また、共産主義でも民主主義でも間に合いません。

 これまでも今日も、大政治家あり、大思想家あり、大発明家あり、大科学者あって、続々と驚異的

な発見をし、発明をし、教育の網もまた、世界中に張り巡らされ、大小さまざまの主義、思想、組織

等々、寝る間も惜しんで活動してきたものです。

 なのにこうした努力が全然報われずに、人心は荒廃への足並みを決して変えず、社会の混乱は日を

追って加速し、天災や災害はしきりに起こるのです。

 何故?
 たった一つ、人生観そのものに、大きな錯覚を持っているからです。

 この最初の致命的な誤りが、長い年月の間に、大きな齟齬(くい違い)の流れとなって現れている

ためです。

 してみれば、この錯覚の上に立脚して出発している今日の世界の経済機構や政治基盤や教育方針な

どが、今後も現在のままで進んでいくのなら、いかなる配慮も努力も、今日までがそうであるように、

すべて水泡に帰するでしょう。

 ここに根元の誤りを究明し、是正する運動の必要性があります。

 この運動にあたって、まず無くしてはならぬものがたった一つあります。

 それは何か。

1、世界の過去、現在、未来を一貫する歴史の底流を能見(全体性の中で本質的に理解)し

2、万物の相関関係とその実質を極め(究極的に理解)、

3、風嵐雨雪、地震、雷電、津波など万象の由来と、その果たしている役割を認め(広い視野を持っ

  て全体的に理解した上で認め)、

4、万物が有している感覚や感情というものの存在意義を達観(広い視点から根本的に理解)し、

5、これら一切をひっくるめて、生成展開活動している自然界の、古今を貫いて存在する永遠不変の 

大秩序を明確に識別する。

こうした眼を持つ人から出てくる理念であります。

 万物はそれぞれ、その属性についた特性を有し、個々においても特異性を有して、それぞれに自治

の生活をしていますが、それらは同時にひとつとして孤立しているものはなく、一連の大生命体なの

で、それぞれの生命の維持法は、必ず他の万物の生命との合流法に適していなければならないのであ

ります。

 この一番大切なことを長い間無視してきた人類が、当然として至った今日の自己崩壊と、それゆえ

に人類が万物に及ぼした悪影響の次第を、はっきりと見て、その処理法を具体的に指導できる人の眼

であります。

 今あなたがたの潜在意識は、自業自得の滅亡を容認して、その準備を終えました。しかし準備完了

して見たら、心の奥底で何かが突然目を覚まし、何かを希い(こいねがい)、何かをひた向きに待ち

始めたのではありませんか。

 何を希い

 何を待つのか 

 それは、このような眼による指導理念の出現を希い、待っているのに相違ありません。

 ここにそうした見地より出た理念の一片を贈る次第です。そして、人類幾千年の混沌を切り開き、

荒んだ(すさんだ)自然界を常態に復させる局所はどこであるかを明示して、あらゆる組織に活を入

れ、あらゆる分野における行動の方向を正す用意が今日の世に必ずしも無いわけではないという希望

の一端を表明するものであります。