オオ脳

オオ脳!

 

 人間の脳は他の動物の脳とは根本的に、構造的に、量的に、そして質的に違います。

説明が少しテクニカルになりますが頭脳労働の方をよろしくお願いします。

まず大きく三つに分けると、脳幹と大脳半球と小脳になります。このうち人間と他の脊椎動物とで大きく異なるのが大脳です。ご承知のように脳には二つの半球があり、右脳と左脳と呼ばれています。間を脳梁と呼ばれる神経線維の束が連結しています。

各半球をさらに四つに区分けしたものが下図です。このような脳葉の内側にほ乳類脳と呼ばれる辺縁脳があり、その又中側に爬虫類脳と呼ばれる脳幹があります。

図の脳葉部分を大脳新皮質と呼び、これがあるのは霊長類だけです。この新皮質には一番多い時で約140億の神経細胞があります。(乳幼児期にそれだけあって生後十ヶ月くらいから減り始めると言われています)。霊長類の中でもお馴染みのチンパンジー君たちにはその半分くらいの数があります。
 その他霊長類のゴリラ君もオランウータン君も持っていない能力が人間だけに生まれながらに備わっています。それは文法構造を持った抽象的な言語能力です。チンパンジー君に言語を覚えさせようという試みは全て失敗に終わったようです。単語は覚えてられても文法を覚えさせることができなかったのです。下図は言語機能の様々な局面がどの辺で管理されているのかを調べたものです。ただし位置に関しては非常に個人差があるそうです。

色は私が勝手につけたもので、実際とは関係ありません。また分布状態や各部分の大きさの比率もおおまかなもので、個人差があります。それでも四つの脳葉にまたがってあちこちに離れて分布している状況は分かると思います。

次は脳の神経細胞(ニューロンとも言います)がどう活動しているかという話です。新皮質のニューロンは比較的大きく、細胞体から出ている突起の数も多いそうで、突起は先が枝分かれしているため樹状突起を呼ばれています。また各ニューロンからは軸索と呼ばれている一本の長い神経線維の束が出ていて、これが脊椎の中まで伸びて通っています。

ニューロンは「刺激という情報」を受けると電気的シグナルとして発信します。刺激とは視覚や聴覚などの五感を通して入ってくるものです。シグナルは細胞内から軸索の果てまで一瞬にして伝わりますが、他の細胞とは電気的に絶縁されているので伝わりません。連絡をするための化学的橋渡しをするのがシナプス(図の青色の部分)と呼ばれる構造です。一個のニューロンが1千個のシナプスを持つこともあります。シナプス結合をするニューロンの数の単位は1万個くらいで、そのグループ同士がまた他のグループとつながりニューロンのネットワークができていきます。面白いことに新しいシナプス結合ができるとその周囲の使われなかったニューロンは死んでしまうそうです。脳が活発に働いている状態というのはシナプス結合が多いということなのだそうです。いわゆる「脳タリン」は脳細胞の数が足りない人でなく、シナプス結合の数が足りない人だったのです。

他にも特記すべき事項として、ニューロンの活動を補助するグリア細胞[1]の役割の重要性があります。脳を構成する細胞には二種類あって、ニューロンとその数倍から十倍もの数があるというグリア細胞です。ニューロンは増殖しません(死んだら減ったまま)が、グリア細胞は分裂して数が増えます。

アインシュタインの脳をスライスして調べた研究発表によると、シナプスのネットワークが密でしかも広範囲にまたがっているというだけでなく、高次の知的活動に関係が深いと言われる脳の39区という部分のグリア細胞の数が普通人の平均より73%も多かったという発表がされました[2]。シナプス結合が盛んに行われた結果グリア細胞が増殖したとも考えられます。

 ではここで質問。高次の知的活動に不可欠なものは何でしょう。数学でも化学でも工学でも哲学でも必ず使わなければならない能力です。それは言語能力なのです。言語を使わなければこれらの研究はできません。知的活動を行っているということは言語を使っているということです。そして考える対象が何であれ、言語活動によって刺激された脳内のニューロンが情報を貯蔵するためにシナプス結合をしているのです。歳をとるに従いニューロンはシナプスも共にどんどん死んでいきます。しかしネットワークが密で広範なほど途切れた結合部分はす速く代わりの結合が穴埋めをして繋いでいくのでいわゆるボケ症状は起き難くなるということです。

 これは仮説ですが、字分けという作業では前の図にあるような言語野の全てを使います。そして字が割れた時に起きる発想の転換が今まで一度も繋がったことのなかった新しい結合を形成し、結果的により広範にわたる密なニューロンのネットワークを作るかもしれません。アインシュタインのように今までだれも考えたことがなかったようなユニークな考えを構築することのできる柔軟な思考能力はシナプス結合が活発に行えるような準備が整った脳を持っていることではないかと思います。

 良い作物を実らせるには良い土壌が必要なのに似ていますね。

テキスト ボックス: 凵 受け箱

ツメ 詰め

ツキ 突き
テキスト ボックス: 脳

突き詰めて受ける容器が脳。何を突き詰めるのかというと疑問の答を求めて考えぬくこと。脳は考えるためにある。考える材料は「疑問」というもの。疑問を持たなければ答を得ることは決して無い。

また月はニクヅキだから脳は肉体の部分で、しかも受け箱なら容器とも言える。そして受け入れるものは情報というコトバ。

「月」を肉体と解釈すると、「ツ」の下に「凶」がある形を凶事は肉体に付き物と解釈したい(ツという音に天鏡の文字をあてると付き物の「付」となる)。凶事は肉体に付き物。肉体がなければ災いも悩みもないですね。でもこの凶という字をよく見ると面白い形をしていることが分かります。

テキスト ボックス: 凶テキスト ボックス: メ 目 命


凵 上だけ開
いた形
 メが上だけ開いている箱に入っています。左右は横並びの人間同士の社会。下は地獄のような辛い世界で、中に入っている命(メ)はキュウキュウして苦しいのですが、目(メ)が上を見れば(視点が変われば)八方ふさがりではないことが分かります。肉体は箱の中に入っていて出られなくとも、心は視点が変わるだけでどこへでも自由に行けます。凶を災いと思っているのは本人の考え方であって絶対的状況ではないということになります。字を分けて見ることでこのように発想が転換するということです。

ついでに悩みという字は忄(リッシンベン、心の意)にツと凶。凶が付いている心は悩むと割れます。悩みたくなかったら横並びの人間同士のいざこざも地獄の沙汰にもあまり拘泥しないで視点を明るく開いた上方に向けてみましょう。

2004/08/04



[1]神経膠細胞ともいう。神経の中でニューロンの隙間を埋め、それらニューロンの代謝を仲介すると共に支持組織としても働いている細胞。

[2]1985年、脳神経学者であるバークレー大学のマリアン・ダイヤモンド博士らは、アインシュタインの頭脳に言語と思考推理の機能を担当する39区域のグリア細胞(神経細胞が円滑に物質代謝を行うよう助ける)が、普通の人々よりはるかに多いことが分かったと話した。